コスト削減
エネルギー高の時代に医療施設の光熱費を抑制する、ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)の施設設計について
(株)松田平田設計HP
総合設計室 医療福祉設計部
ZEBとは
建物の消費エネルギーをどう抑制していくかは社会の大きな関心事であり、医療施設においても重要な事項です。2021年10月に閣議決定した地球温暖化対策計画では、業務部門の建物でのエネルギー消費量を、2013年度比51%削減することが求められています。
そこで関心が高まっているのがZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)。エネルギーの消費と生産の収支をゼロに抑えた建物です。エネルギー消費量を限りなく低減させた上で、その消費分を再生可能エネルギーでつくり補う、エネルギー的に自立した建物です。
ZEBが自治体病院にもたらすメリット
24時間稼働する医療施設は事務所や商業施設など他の施設と比べエネルギー消費量が大きい傾向があり、2022年からのロシア・ウクライナ情勢により公的・公立病院の約8割が光熱費高騰の影響を受けています。そのため自治体病院がZEBに取り組むことは社会的意義や運用コスト抑制の観点から非常に有用であると言えます。
当社は、日本初のZEB庁舎『開成町新庁舎』を初め、多くのZEB建物を手掛けています。約18,000㎡の某公的医療施設では消費エネルギーを30%削減することで、年間約2700万円の光熱費縮減効果がありました。
現在までのZEBのノウハウから医療施設に貢献できる省エネルギー技術を2つ紹介します。
CASE01 センシングによる空調・照明の連動制御 ~細やかな制御で無駄を削減~
医療施設の光熱費を抑えるためには、無駄な消費エネルギーを削減していくことが有効です。
一般的な空調や照明は「部屋」ごとに制御していましたが、センシングによる人の在/不在の把握と細やかなゾーニング制御により「人」に対して空調や照明等の各設備を制御し、エネルギー消費を抑えるシステムです。
例えば4床室では、部屋に設置した画像センサーや人流センサーにより在室人数を把握し、4人が入室している場合は照明を100%点灯・空調を100%運転に、2人しか入室していない場合は、照明を人のいるゾーンのみ点灯・空調を50%運転に連動制御する仕組みです。
空調・換気・照明等の複数の設備を連動制御することで、省エネルギー効果を高めます。
CASE02 輻射空調 ~省エネと滞在者の温熱快適性の向上を実現~
一般の空調方式は冷たい/暖かい風を送り出すシステムであるのに対し、輻射空調は天井面や床面自体を冷やす/暖めることで空調を行うシステムです。輻射空調では放射熱伝達を利用するため、平面・上下方向の温度分布が均一となり温熱快適性が高くなるとともに、気流が発生しないので、外来待合等の不特定多数が集まる場所でも気流の制御がしやすくなります。床輻射・天井輻射空調システムを全面に採用したZEB建物では、エネルギー消費量を一般建物と比較して75%低減しました。